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沖縄の海は夏だけじゃない!一年を通して楽しむことのできるダイビングを季節ごとにご紹介!

Author
  • 上出 俊作(水中写真家)

こんにちは。
沖縄在住の水中写真家、上出俊作です。

早速ですが皆さん、ダイビングのベストシーズンはいつだかご存知でしょうか?

ダイビングもマリンレジャーのひとつですし、夏をイメージされる方も少なくないかもしれません。
確かに、沖縄の夏は水温も30℃近くまで上がってまさに”南の楽園”ですし、訪れるダイバーの数も多いです。そういう意味では、夏に最も盛り上がるレジャーと言えますね。

でも実は、沖縄では一年中ダイビングを楽しむことができるんですよ。
しかも、冬場でも水温が20℃前後はあるので、ウエットスーツやドライスーツを着れば、快適に潜ることができます。

沖縄って一年中暖かいんじゃないの?と思うかもしれませんが、季節の移り変わりもありますし、水中にも四季があるんです。
こちらの記事では、季節によって沖縄の海の中がどのように変わっていくのか、どんな光景と出会えるのかについて紹介していきますね。

季節ごとにそれぞれ違った魅力がありますので、ぜひ参考にしてみてください。

新しい命の誕生を見ることができる「春」

春は太陽が顔をのぞかせる日も多くなり、水温が徐々に上がり始めます。
生き物たちは求愛・繁殖活動を活発化させ、水中に新しい命が溢れる季節です。
海に入ると、まるで魚たちの幼稚園に紛れ込んだような気分になります。

最初はなかなか区別がつきにくい生き物も多いですが、じっくり観察してみると、それぞれ色や形が少しずつ違う事に気が付きます。
みんな小さいうちは目がクリっと大きくてかわいいですよね。

春に繁殖活動を活発化させるのは、魚だけではありません。
イカの仲間の「コブシメ」も、春になると求愛し、産卵します。

沖縄の色々な場所で見ることができますが、観察できるスポットとしては石垣島が有名でしょうか。
雄のイカたちがメスを巡って争う光景は、独特の迫力があります。
コブシメは体の色を自由に変えることができるので、初めて見たときにはびっくりするかもしれません。
敵のオスには怖そうな色、狙っているメスには綺麗な色が見えるように、半分ずつ体の色を変えることもできるんですよ。

(写真提供:工藤方照さん)

春の沖縄で迫力のある「群れ」を見たいなら、粟国島がオススメです。
数百、数千匹のギンガメアジが玉となり、マグロロウニンアジなどの捕食者がギンガメアジにアタックをかけます。

詳しい理由はわかっていませんが、毎年4月頃から、粟国島の筆ん埼というポイントにギンガメアジが集まってくるんですよね。
沖縄だけでなく、世界中見渡しても、これだけの群れが見られる場所は多くありません。
潮の流れがかなり速くなることがあるので上級者向けの海と言えますが、ぜひ一度見て欲しい光景です。

一年で一番華やかな海の中を見ることができる「夏」

6月後半、沖縄は日本で最初の梅雨明けを迎えます。この時期特有の強い南風「夏至南風(カーチーベー)」が吹くと、今年も夏が始まったなと感じますね。

気温は連日30℃を超え、街も海辺も亜熱帯のムッとした空気に包まれ、その雰囲気はまさに南国を絵に描いたようです。

水中では、春に生まれた幼魚たちが徐々に成長し、その顔つきからはたくましさすら感じます。子供の成長はあっという間ですね。

巣穴に隠れてた生き物たちも一斉に飛び出し、水中は一年で最も華やかな季節です。

夏の間は、台風さえ来なければ、毎日のように強烈な日差しが水中まで差し込みます。
年中観察できる生き物や景色でも、太陽光があるのとないのでは全くの別物です。

沖縄の各地でサンゴの群生が見られますが、サンゴの見栄え・写真映えという意味では、ほとんどのポイントで夏がベストシーズンと言ってもいいかもしれません。

夏の光に照らされた沖縄のサンゴ礁は、それを見るためだけに遠くから訪れる価値があります。

海水浴やスノーケリングをしているだけだとなかなか気づかないのですが、沖縄の海の中には、洞窟や亀裂岩に空いた穴など、不思議な地形がたくさんあります。

ダイバーの間で最も有名なのは宮古島ですね。
宮古島周辺には特徴的な地形のダイビングポイントがたくさんあります。

年中楽しめるポイントもありますし、冬の方が海況がいいポイントもあるのですが、「レーザービーム」を見るならやはり夏ですね。
真っ暗な洞窟にズドンと差し込む一筋の光。
これを見るためには、太陽が高くに上る夏の晴れた日に潜る必要があります。

(写真提供:河田啓奨さん)

夏の沖縄は、南風が吹く日が多くなります。
各地のダイビングポイントは風向きによって行けたり行けなかったりするのですが、当然南風じゃないと行けないポイントもたくさんあるんですよね。

その中でひとつ特徴的なポイントを上げるなら、沖縄本島と橋でつながっている離島、古宇利島のUSSエモンズでしょうか。
このポイント、一般的な沖縄のダイビングとはちょっと趣が異なります。

「USS」というのは「United States Ship」の略なのですが、つまりこれは、アメリカ軍の艦艇という意味です。
USSエモンズは太平洋戦争で日本軍による攻撃を受け、結果的に古宇利島の沖に沈められました。水深40mの海底に、全長100mを超える巨大な船が今もその原型をとどめて横たわっています。

水深が深く流れも速いので上級者向けのポイントですが、このUSSエモンズを見るためにダイビングを始めたという方も少なくありません。
沖縄最大の沈船USSエモンズには、それほどまでに人を惹きつける何かがあるようです。

ダイバーが少ないがまだ暖かくてのんびりと楽しむことができる「秋」

9月も後半になると、本州では秋らしい日が多くなってきますよね。
沖縄も徐々に朝晩は涼しくなってきますが、日中はまだまだ真夏です。

しかも、一般的に水温は気温よりも1~2ヶ月遅れて上がり下がりすると言われています。
つまり、暦の上では秋と言っても、水中はまだまだ夏なんですね。
実際に、11月の水温は、5月のゴールデンウイークよりも高い事の方が多いんですよ。

9月の連休までは、水中もダイバーで賑わっていることが多いのですが、10月頃になると、ダイバーも観光の方も少なくなります。
つまり、秋は人が少なく、しかも水温が高いので、のんびり快適にダイビングを楽しむことができるんです。

個人的には、普段見過ごしてしまっているような生物をじっくり観察したり、写真を撮ったりするのがオススメですね。

クマノミの仲間やハゼの仲間など、年中観察できる生き物も多いのですが、動きがすばしっこくて、実は写真を撮るのは難しいんです。
その分、思い通りに撮影出来たときの喜びは格別ですよ。

秋になると沖縄の各地で、「ミジュン」や「キビナゴ」などの小魚の群れが見られます。
時には、この小魚を捕食するために、大型の回遊魚が群れに突っ込んでいくこともあって迫力満点です。
その年によって出現する場所や群れの規模は異なるので確実に出会えるわけではありませんが、もし運よく出会えたら、ぜひカメラにおさめてくださいね。

ダイバーからの人気No.1と言っても過言ではないマンタも、出会える確率が最も上がるのは秋です。
世界有数のマンタポイントがある石垣島では、夏頃から川平石崎というエリアでマンタとの遭遇率が上がり始め、9月から10月にそのピークを迎えます。
秋が深まると、風向きの関係でポイントに行けない日も増えるのですが、何匹ものマンタが乱舞している光景は、石垣島の秋の風物詩です。

また、石垣島ほど有名ではありませんが、慶良間諸島でもマンタと出会える事があります。
明確なシーズナリティはありませんが、夏から秋にかけて遭遇率が上がるそうです。
透明度抜群の慶良間の海で出会うマンタも格別ですね。

(写真提供:河田啓奨さん)

【冬】

沖縄の冬は、年末年始を除けば観光客も少なく、ホテルや飛行機も安価に取れるのが嬉しいですね。
ダイバーも夏に比べればだいぶ少ないので、インストラクターさんやガイドさんを貸し切りなんて事もけっこうあります。

温かい季節に比べると水中の華やかさは少し劣りますが、目を凝らして岩陰や砂地の上を観察すると、宝石のような生物が見つかります。
ご存知の方も多いかもしれませんが、海の宝石と言ったら「ウミウシ」ですね。

沖縄では、水温が下がるとともに、ウミウシたちの活動が活発になります。
イメージとしては、年明けくらいから見かける頻度が増えてくるような気がします。

一言でウミウシと言っても、色も模様も様々です。
実は大きさもまちまちで、2㎜くらいの肉眼ではほとんど見えないような種類から、10㎝以上あるちょっと可愛いとは言いづらい種類まで、バリエーションが本当に豊富なんですよ。

まるでアニメのキャラクターのような種類もいて、ダイバーからは大人気です。
よく見るとそれぞれのウミウシに表情があるように見えてきませんか?

同じ種類のウミウシでも、住んでいる環境によって全く違う写真に仕上がるので、何度撮影しても飽きないんですよ。

冬の沖縄は、ウミウシだけではありません。
大物好きのダイバーにとっても特別な季節です。

八重山諸島に属する日本最西端の島「与那国島」には、冬になるとハンマーヘッドシャークの群れが現れます。
潮の流れが速く、ダイバーになってからそれなりの経験を積む必要がありますが、ひとつの目標になる海ですね。
毎年冬になると与那国島を訪れ、ここ以外に興味がなくなってしまったというダイバーもいるほどです。

(写真提供:青柳智久さん)

一年を通して様々な魅力を楽しめる「沖縄」のダイビング

夏のレジャーというイメージが強いダイビングですが、実は季節ごとに違った魅力があることが伝わりましたでしょうか?

小さな生き物を観察したり、ゆっくり写真を撮ったりするなら、ダイバーが比較的少ない季節を選ぶのがいいですね。
あるいは、THE南国を感じたいということでしたら、やはり夏がオススメです。
「ウミウシを見たい!」とか「光のレーザービームを浴びたい!」とか、何かお目当てがあるようなら、季節と場所を決め打ちで行くのがいいでしょう。

僕自身は、四季を通して撮影したい被写体が常に何かしらあるので、一年中海に潜っていますし、いつもワクワクしています。
そういう意味で、沖縄はダイバーにとって天国のような場所だと思いませんか?